研究概要 |
我々は肺癌の遺伝子治療としてWntシグナル抑制とTM4SF誘導の両面から,腫瘍のプログレッションを包括的に抑制する癌遺伝子治療の研究を行っている.Wnt抑制ベクター作製のだめ,Wnt1とWnt2b,Wnt5aに対する合成siRNAを作製し,リポフェクション法でヒト癌細胞株ヘトランスフェクションし,発現抑制に最適なsiRNA配列をそれぞれ決定した.決定したsiRNA配列を元にshRNA(short hairpin RNA)配列を設計し,pBAsi-hu6 DNAプラスミドベクターに組入れ,発現抑制shRNA発現プラスミドベクターをそれぞれ作製した.そしてshRNA発現プラスミドベクターからヒトU6プロモーターとshRNA配列を切出し,COS-TPC法でWnt抑制shRNA発現アデノウィルスベクターを作製し,濃縮・精製を行った.Wnt2b抑制ベクターによる実験では,in vitro実験でWnt2b高発現癌細胞株に対して強力な細胞障害活性が認められた.更にWnt2b高発現癌細胞株を移植した担癌ヌードマウスによるin vivo遺伝子治療実験でも,Wnt2b抑制ベクターは強力な抗腫瘍効果を認めた(AACR2009).現在,Wnt1抑制ベクターとWnt5a抑制ベクターについて追加検討中である.我々はTM4SFのメンバーである癌転移抑制遺伝子CD9の発現誘導アデノウィルスベクターも用いて,癌転移抑制遺伝子治療の研究も行い,機能解析を行っている(Huang et al, Oncogene2006).そしてWnt抑制とTM4SF誘導を効率よく行うため,我々は更にカクテルベクターの作製にも取り組んでいる.一方,非小細胞肺癌におけるWnt1過剰発現が,c-MycやMMP-7の発現を誘導し,悪性度の高い腫瘍を形成していることも我々は明らかにした(Huang et al, Eur J Cancer 2008).
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