【大動物を使った慢性実験】ブタの胸部下行大動脈に脱細胞化大動脈弁とコントロールとしてステントレス大動脈弁を移植した。カテーテル的に生来の大動脈弁にIII度以上の大動脈弁閉鎖不全症(AR)を作成した。AR作製前、移植弁は開口したままで閉じることは全くなかった。しかしながらAR作製直後より移植弁の開閉は良好で、拡張期に移植弁の完全閉鎖も確認された。移植後3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月後に経食道エコー検査施行後、弁を取り出し、胸部X線、病理学的検査を施行した。 【結果】脱細胞化大動脈弁を移植されたブタに死亡例はなく、経食道エコー検査では脱細胞化大動脈弁の開閉は良好で、逆流を全く認めなかった。脱細胞化大動脈弁は3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月の移植弁ともに弁尖に亀裂や穿孔などの変化を全く認めず、大動脈壁の瘤化や拡大等の所見も見られなかった。胸部X線ではステントレス大動脈弁が3ヶ月で弁全体に著明な石灰化を認めるのに対し、12ヶ月後の脱細胞化大動脈弁は弁尖の石灰化を認めなかった。病理学的検査では3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月ともに石灰化はなく、6ヶ月の移植弁で弁尖の先端まで内皮細胞の被覆が確認された。カテーテル的に作成したARも3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月経過しても治癒傾向はなく、ARが持続的に維持されたことが確認できた。脱細胞化大動脈弁のCa contentはステントレス大動脈弁と比較して弁尖・大動脈壁共に有意に低値を示した。また、脱細胞化大動脈弁のCa contentは3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月経過しても有意な上昇を認めなかった。 【結語】大動物を使った慢性実験で我々が開発したハイブリッド大動脈弁の耐久性が証明された。臨床応用に向けて準備をしていきたい。
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