研究概要 |
本年度はMET遺伝子の変異解析を中心に研究をおこなった.MET遺伝子は7q31に存在する癌遺伝子であり増幅や突然変異による活性化が腎癌や肝癌,胃癌などで報告されている.また肺癌においてMET遺伝子増幅がゲフィチニブに対する獲得耐性機序のひとつであることが報告された.これまでに報告された非小細胞肺癌におけるMET遺伝子変異は,一例を除いてエクソン14の欠失であり,これはエクソン14はユビキチンリガーゼであるc-cblの結合部位の喪失をもたらすことで受容体の発現の遷延化をおこすことが知られている.本研究においてはゲフィチニブ未治療例において,MET遺伝子増幅と膜貫通部位の遺伝子変異を検討した.187例の肺癌におけるMET遺伝子増幅はreal time PCRで検討した.あた,METの膜貫通部位の変異解析を原発性肺癌262例、および16例の肺癌細胞株を対象とした。標本より抽出したRNAを使用し膜貫通部が存在するエクソン14を挟みRT-PCR、ダイレクトシーケンスを施行し解析した。また,変異を見いだした症例についてはゲノムDNAの塩基配列も決定した【結果】MET遺遺伝子増幅は148例の腺癌中二例に存在した(1.4%).遺伝子変異は手術症例では腺癌211例中7例(3.3%)に認めたが,細胞株にはみとめなかった.全例でエクソン14が欠失するスプライスバリアントであり,7例中4例についてはスプライスコンセンサスを破壊するような点突然変異や欠失変異がゲノムDNA上に見いだされた。MET増幅とMET変異は重なっておらず,かつこれらの症例ではEGFR,HER2,KRAS遺伝子変異と排他的な関係にあった.増幅や遺伝子変異によるMET遺伝子変異はあわせて5%程度ながら,新たな腺癌のサブグループを形成していると思われ,これらに対してMETを標的とした治療が奏効することが期待される.
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