研究課題
線条体における脳虚血後の神経再生については、昨年度報告した通り、成長因子の投与によって、15%の形態学神経再生が得られ、電気生理学的にも成熟神経細胞の特徴を捉えることが可能であった。本年度は、 Notch受容体刺激、および阻害剤が神経再生に及ぼす影響についてさらに検討を加えた。その結果、虚血後3-5日では、神経前駆細胞が増殖段階にはいりNotch受容体を発現しているにもかかわらず、成長因子下にNotch受容体刺激剤(DLL4)を投与しても相加的増殖刺激作用は得られなかった。これは増殖因子によって増殖応答が最大限に達していた可能性を示唆する。一方、 Notchの細胞内情報伝達因子であるNICDの活性化は亜急性期まで持続しており、これが神経前駆細胞の分化に影響を及ぼしている可能性が示唆された。そこで、この時期にNotch情報伝達阻害薬のガンマセクレターゼ阻害薬を投与して、 NICDの活性を低下させたところ、1ヶ月後の神経再生の促進効果が得られた。 Notch情報伝達系は、神経幹細胞、前駆細胞の増殖に促進的に作用していることが他からも報告されているが、一方では未分化状態の維持にも関与して分化を抑制していることが胎生期の研究などから報告されている。本研究では、 Notch情報伝達系が成体脳における脳虚血後の再生過程において一定の役割を担っていることを示すことができた。特に、亜急性期の阻害薬の投与で神経分化への方向が促進されたことは、成体脳における神経再生療法を開発してゆく上で、 Notch情報伝達系の操作が有用な治療手段の一つとして示唆されたと考えられた。
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