研究課題
脳卒中や頭部外傷の後遺症として記憶障害がみられる患者にDHAやアラキドン酸などのPUFAを服用させると、記憶力が改善すること見出した。PUFAには細胞膜のリニューアル以外にも何らかの機能があるに相違ないと考え、膵臓におけるインスリン分泌と2型糖尿病の発症に関わるオーファン受容体の一つであるGPR40に着目し、解析を行った。すなわち、ヒトのGPR40蛋白に対するポリクローナル抗体を作成し、ウエスタンブロットと免疫組織化学による検索を行うと、GPR40はニホンザルの中枢神経ニューロンに広範に発現していることがわかった。このことはPUFAが細胞膜の構成単位であるのみならず、GPR40受容体を通して細胞外シグナル伝達分子として作用していることを示唆している。ちなみに、PC12細胞にgpr40遺伝子を導入し、ArgusカメラでCa^<2+>イメージングを行うと、微量のDNAに対して野生型の細胞は無反応であるのに対して、gpr40導入細胞はCa^<2+>動員を示した。そこで、正常および脳虚血サルを用いて、成体脳でもニューロン新生がみられる海馬におけるGPR40の発現について研究した。海馬切片を免疫蛍光染色し共焦点顕微鏡で観察したところ、歯状回SGZの新生ニューロンをはじめ、神経幹細胞および血管内皮細胞、アストロサイトがGPR40を発現していた。しかも、ウェスタンブロットでは、GPR40蛋白の発現量は虚血負荷後漸増し、ニューロン新生がピークとなる虚血第2週目に最大となった。さらに、脳卒中や頭部外傷の後遺症として記憶障害がみられる患者にアラキドン酸やドコサヘキサエン酸を服用させると、記憶力が改善することを報告した。以上より、PUFAはGPR40を介して情報伝達を行うことによりニューロン新生を制御しているものと推定された。
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