研究概要 |
20世紀中に完治できなかったがんや生活習慣病等に代表される難治性疾患に対し、有効で、かつ効率的な新規医療を開発することは、極めて重要である。しかしながら、基盤研究から実用医療へと展開できるプロジェクトの数は、1/10,000に過ぎず、莫大な経費と人材が無駄になっている。そこで、本研究では、律速になっている開発領域の整理を行い、通過するための評価方法とその基準つくりを念頭においた先端医療開発の実施を目的した。具体的には、2つの課題、すなわち(1)「分子医療」開発に関わる基盤研究の促進と(2)新規医療開発研究の律速になっている領域を効率よく通過するための評価方法と基準つくりの提案を行った。平成18年度からの2年間でイメージング機能付ナノデバイスリポソームの開発を行い、トレーサビリティーと治療効果の相関性を確認した。(1)分子医療マテリアルの選択・同定:本研究では、aurora、JNK、XIAP、Fas、TRAILに対する低分子化合物をdry環境にあるコンピュータシミュレーション下でデザインし、その生物学的活性を評価した。(2)リアルタイムトレーサビリティーを付加したキャリア〈ナノデバイスリポソーム)の開発:ナノデバイスリポソームの形状や表面の電荷状況(Z-poteintial等)を変化させ、網内系をスルーできる性状を確認した。また、MRに対応したGd包埋リポソームを調製し、十分な追跡が可能であることを証明した。細胞内分布と代謝経路の解析には、設備備品としてあげたキーエンス社のオールインワン蛍光顕微鏡を活用した。これらのことからイメージング機能付ナノデバイスリポソームは細胞内あるいは生体内に投与した分子医療マテリアルの存在場所や代謝様式を知るうえで有用なデバイスであるとともに、治療効果の予測をも可能することができるかもしれないといった期待を抱かせた。
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