研究概要 |
近年,脳動脈瘤コイル塞栓術の安全性と操作性が格段に改善され多数の症例に適応されるようになってきた。良好な治療成績から適応が拡大する一方で,長期成績を含めたコイル塞栓術の限界点や問題点も明らかになってきた。最大の問題は,現時点での動脈瘤コイル塞栓術が動脈瘤内にコイル塞栓子を挿入する充填法であるがゆえに,動脈瘤の形態に制限され,初期治療で完全閉塞が得られない症例があること,特に動脈瘤の入口部の閉塞が不完全のため,再発の頻度が少なくないことである。これらの諸問題を解決し,あらゆるタイプの動脈瘤を安全かつ確実に治療するためには,従来にはない全く新しい発想のデバイスや治療法を開発することが必要である。そこで,本研究では,あらゆるタイプの動脈瘤を安全かつ確実に治療するために,生理活性物質固定化脳動脈瘤塞栓用コイル,細胞接着因子固定化液体塞栓物質,ナノテクノロジーを用いた脳動脈瘤塞栓用頭蓋内ステントなどの新規デバイスの開発研究を行っている。本年度は以下の研究を行った。 細胞外マトリクス蛋白質であるテネイシンを結合させたヘパリン様活性をもつ多糖類を繊維状に加工し,脳動脈瘤塞栓術用のコイル中空に固定し,それをラットの総頚動脈を結紮し盲端にした動脈瘤モデルに留置し,組織反応を検討した。その結果,良好な成績が得られたため,現在,ラビットのエラスターゼ動脈瘤モデルに留置し,その病理学的変化を検討中である。一方,巨大動脈瘤治療用カバードステントをラビットに留置し,短期経過において良好な結果が得られている。現在,長期経過観察および薬剤溶出カバードステントの開発を行っている。
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