研究概要 |
本研究の目的は、「硬膜動静脈痩の病因・病態の解明を発展させ、特に抗血管新生因子による治療について」の検討である。 雄ウイスターラット6〜8週齢(280-300g, n=35)を用いた。ラットは血管撮影郡(n=15)と免疫染色郡(n=15)の2郡に分け、それぞれsham群と比較した。Dural AVFモデルの作成は、Spetzler et al., JNS87,1997の方法を改良した。全身麻酔下にラットの上矢状静脈洞をbregmaの3mm後方で閉塞し、頚部にて右総頚動脈-外頚静脈を端々吻合し、吻合側と対側の横静脈洞からの流出静脈を結紮した。その後、ラットをケージに戻し、通常の飼育をした。1週間後に硬膜を含めて脳を摘出し上矢状静脈洞閉塞部前後の切片を作成し、VEGFの発現を免疫染色により観察した(n=15)。血管撮影は90日後に行った。(n=15)。その結果、Sham群では血管撮影上の変化やVEGFの発現は明らかでなかった。Dural AVFモデル郡では、吻合部は全例で開存してしており、吻合された静脈は著明に拡張していた。血管撮影群で15匹中6匹(40%)で硬膜動脈からのAV shuntがみられた。硬膜の静脈洞近傍に15匹中5匹(33%)で発現がみられた。脳の皮質、基底核の神経細胞に15匹中11匹(73%)にVEGFの発現がみられた。 以上より、脳静脈圧亢進状態により虚血に陥った組織近傍に血管新生因子が発現し、硬膜動静脈痩が発生することが証明された。
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