本研究の目的は、「硬膜動静脈痩の病因・病態の解明を発展させ、特に抗血管新生因子による治療について」の検討である。今回は、血管新生因子VEGF(vascular endothelial growth factor)の血管透過性亢進作用に着目し、虚血急性期にその作用を拮抗することが新しい脳浮腫治療となりうるかを検討した。雄ウイスター系ラットを用いた(n=21)。麻酔導入後、溶媒(PBS)或いは溶媒(PBS)に溶解したVEGF中和抗体(以後中和抗体)を腹腔内投与し、それぞれcontrol群(n=10)、中和抗体投与群(n=11)とした。全身麻酔下に左前頭頭頂開頭を行い、光感受性色素を用いて隣接する2本の脳皮質静脈を閉塞した。24時間後に、MRI(VARIAN UNITY INOVA、4.7T)を用いて、T2強調画像(T2WI)と拡散強調画像(DWI)を撮像した。T2WIとDWIのデータより、apparent diffusion coefficient of water map(ADCw map)を作成した。脳浮腫はADCw mapにおける高信号域として同定した。MRI画像の各高信号域をNIH imageを用いて計測し、2群間で統計学的に検討した。また、HE染色とVEGFに対する免疫染色を行い、組織学的所見とMRI所見の比較も行った。その結果、T2WI、DWI、ADCw mapの各高信号域は、中和抗体投与群で優位に小さいことが示された(p<0.05)。脳浮腫を表すADCw mapの高信号域の VEGF発現を免疫組織学的に確認した。以上より、脳静脈梗塞において、VEGFが脳浮腫及び梗塞巣が縮小させ、脳保護効果のあることが証明された。
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