研究概要 |
失語症の回復過程を支える脳内機序を研究するため,回復過程にある失語症の症例において,言語刺激を行ったときの脳の活動の時間的および空間的な分布を計測する懸隔である。48チャンネルの光トポグラフィーを用いて計測を開始した。現在までに7名の失語症症例を計測した。すべて左半球の脳卒中による損傷で失語をきたしており、回復中である。言語刺激として語想起題を15秒間行うことを5回繰り返し光トポグラフィー計測し平均加算した。結果としては,3名は左前頭葉に非定型的な活動がみとめられ,3名は右前頭葉のみに言語課題に一致した時間帯に活動が,1名は両半球とも明確な活動が認められなかった。このうち現在3名を継続して追跡している。さらに3名の患者を新しく追加した。今後はさらに症例を積み重ねて,時系列的な追跡もあわせて行う予定である。一方,計測法の標準化も合わせて研究を行っている。 失語症の回復を光トポでモニタリングするためには,多被験者にわたって安定的に言語野の位置を計測するための,標準的なプローブ設置法の開発が望まれている。従来のMRI併用による脳構造画像の取得では,光トポの簡便性が損なわれてしまう。そこで,光トポプローベの形状と被験者の頭皮上への設置をコンピュータ上にシミュレートする,バーチャルレジストレーション法を開発した。これによって,光トポ単独でも,計測位置を標準化し,客観的に記載することが可能となった。今後は,被験者の頭のサイズの影響をシミュレーションに取り込んでいく。さらに,言語野に焦点を絞った検証研究を展開していく予定である。
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