研究課題/領域番号 |
18390404
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
渡辺 英寿 自治医科大学, 医学部, 教授 (50150272)
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研究分担者 |
檀 一平太 独立行政法人農業, 食品産業技術総合研究機構食品総合研究所食品機能研究領域, 主任研究員 (20399380)
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キーワード | 失語症 / 光トポグラフィー / 言語機能計測 / MRI脳表画像 / 3次元位置計測 / 高次脳機能 |
研究概要 |
失語症の回復過程を支える脳内機序を研究するため、回復過程にある失語症の症例において、言語刺激を行ったときの脳の活動の時間的および空間的な分布を計測した。48チャンネルの光トポグラフィー(ETG4000)を用いて計測した。初年度からしだいに症例数を増やし現在は総計30名の失語症患者につき機能計測を続けている。30例中13例は右(劣位)半球下前頭回に言語活動に一致した血流増加が観察され、この部位の神経活動が言語機能を支えていると考えられた。10例は優位側(左)に活性が認められ、7例は左に血流が低下するような、異常な反応が認められた。30例中11名は複数回の計測を行い、活動部位の変遷を検討した。11例中7例は右に活性が認められたが、2例は半年後に他の5例は3-6ヵ月後に活動が優位側にも出現し、同時に非優位側の活動が低減していることが観察された。このように、回復期の早期には非優位側が言語活動をささえ、次第に優位側が回復してくるとともに、非優位側の活動が下がって切り替えが行われる現象が起こることが分かった。一方、残りの4例ははじめから左に潜時の遅れや波形逆転など波形の異常はあるもののなんらかの活性があり、経過とともに明確で正常な反応へと正常化する傾向が認められた。複数の被験者から得られた光トポデータの解析は、通常、被験者間でチャンネル(計測点)の位置が同じであると仮定して、チャンネルごとにデータ解析を行なう。しかしこの方法では、異なるチャンネル設定を用いて計測した複数の研究のデータを統合するのが難しい。そこで、チャンネルを脳の解剖領域別に分類してから、被験者間のデータを解析する、新しい解析方法を開発した。これにより、チャンネル設定の異なる研究官でのデータ統合が可能となった。また、ノイズや欠損値の多い光トポデータに頑健な統計手法として、ノンパラメトリック法の優位性を示した。さらに、ブローカ野の機能解析において、光トポが、舌運動、語想起課題、味覚刺激課題遂行時の脳活動パターンを明確に判別しうることを明らかにした。
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