研究概要 |
1. 目的 力学的負荷の減少により腱組織に生じるマトリクス改変現象の発生機序を解明するため、IL-1 receptor antagonist (IL-1ra)の投与が除負荷による膝蓋腱と膝蓋腱線維束の力学的特性に与える効果を比較検討した。 2. 材料および方法 白色家兎右膝蓋腱に対し除負荷処置後, IL-1ra群では5-μg IL-1raを, PBS群ではPBS0.2mlのみを膝蓋腱周囲に投与し, 投与後3週で膝蓋腱と膝蓋腱線維束の力学的検討を行なった。 3. 結果 IL-1ra群の膝蓋腱における弾性率および引張強度はPBS群より有意に高値を示した(弾性率 : p=0.016、引張強度 : p=0.006)。一方、膝蓋腱線維束の弾性率および引張強度に関してはIL-1ra群とPBS群の間に有意差を認めなかった。 4. 結論 研究者らは過去に除負荷が膝蓋腱線維芽細胞のIL-1beta発現を亢進させることを明らかにした。腱組織の力学特性は構成体である線維束の力学特性に加え、線維束間の結合力が関与することが知られている。したがって, 本研究の知見は除負荷よるIL-1beta過剰発現は腱線維束間の結合力を減少させることにより膝蓋腱の力学的劣化を惹起させることが示唆し、廃用による腱組織の力学的劣化に対する治療戦略に有用な情報をもたらすものと考えられた。
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