研究概要 |
(1)最適な素材の同定と骨モデルの作成 立体骨モデルは,あらかじめ撮影したCT画像をもとに三次元積層法を応用したインクジェッ粉末積層装置を用いて作成している。材料として石膏が主に使用されるが,骨モデルの特性が改良された結果,骨切り用のボーンソーの使用,人工股関節置換用手術器具(寛骨臼リーマー)の使用への対応が可能である。 (2)骨モデルの特性 問題点は「ねじれ」と「衝撃」が負荷された時の脆弱性で,弾性の付与が課題である。 (3)手術シミュレーションへの応用 前年度に引き続き,新たな複数症例に対して,術前のCT画像を元にコンピュータの仮想空間(Mimics10;Matehahse社製)上で手術計画を行うと同時に,実物大の骨モデルを用いた手術シミュレーションを行った。A)骨切り術については,寛骨臼の前壁欠損の強い症例や臼蓋形成不全が特に高度な症例対して,骨切りの位置や移動回転骨片の設置位置を再確認でき,精確な手技の遂行に有用であった。B)人工関節置換術及び人工関節再置換術については,人工関節の設置位置と設置方法は,術後の予後に大きく影響すると同時に,神経,血管などの損傷を来たさず,安全に手技を遂行するためには重要であるが,実際の手術を安全に遂行するために有効であった。C)矯正骨切り術は,病的に変形した骨を一旦切り離して正常に近い形に再直合するものである。骨切りの位置,ノミやボーンソーの進行方向,骨切り片の大きさ,矯正の具合をシミュレーションすることが可能であった。D)高度な骨変形を伴う奇形あるいは骨系統疾患症例に対する手術については,既存の人工関節とカスタムメイド人工関節の適応が適格に判断できた。(4)外科医の技量向上のための教育ツールとしての利用通常の解剖に比べて特に形態が異なるケースに対しては,術前のシミュレーションは術者のイメージを補完し助手が共有する上で有効あった。
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