研究課題/領域番号 |
18390414
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
戸口田 淳也 京都大学, 再生医科学研究所, 教授 (40273502)
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研究分担者 |
中村 孝志 京都大学, 医学研究科, 教授 (10201675)
青山 朋樹 京都大学, 再生医科学研究所, 助教 (90378886)
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キーワード | 間葉系幹細胞 / 癌化 / 突然変異 / メチル化 / 発現誘導システム |
研究概要 |
平成19年度は以下の成果を得た。 1)初代培養MSCの培養過程における遺伝子変異の解析 約40例の初代培養MSC細胞に対して、p16遺伝子のメチル化、ras遺伝子群の変異及びSYT-SSXとEWS-Fli1融合遺伝子形成を解析した。その結果、4例においてp16遺伝子のメチル化が検出された。このうち2例はPD10以降に発生し、いずれもp16遺伝子発現が非常に高くなった直後に発生していた。2例ではPD5付近ですでに検出され、早期から発生する場合もあることが判明した。Ras遺伝子群の変異及び融合遺伝子は検出されなかった。 2)培養過程における諸因子の変異発生率に対する影響の評価 培養条件として血清濃度(1%と10%)、酸素濃度(5%と20%)、増殖因子添加(bFGF)に関して検討した。血清濃度に関しては、増殖率は濃度依存性であり、p16遺伝子の発現に関しても同じく濃度依存性であった。酸素濃度に関しては継代5代程度までは通常濃度で培養した細胞の増殖が低酸素濃度下のものを上回っていたが、それ以降は逆転し、低酸素濃度下培養の方が最終倍加数も高値を示した。興味深いことに、p16遺伝子の発現は低酸素濃度下培養が低い値を示した。bFGF添加に関しては、増殖率に変化はなく、p16遺伝子の発現も同等であった。いずれの培養条件でもp16遺伝子のメチル化は検出されなかった。 3)癌化細胞としての表現型の解析 5例のMSCを用いて足場非依存性増殖能、ヌードマウスでの造腫瘍能、及び核型解析を行ったが、いずれも癌形質を獲得した細胞は検出されなかった。 以上の解析により、p16遺伝子メチル化が唯一早期に検出される変異であること、培養条件によりp16遺伝子発現が異なること、そして血清濃度、増殖因子等で発現高値を誘導することでメチル化が発生する危険性が増加する可能性が示唆された。
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