研究概要 |
目的:アレイCGH法を用いてDNAコピー数異常の検出を行い、内軟骨腫、低悪性軟骨肉腫の分類可能か検討した。 方法:内軟骨腫9例、低悪性軟骨肉腫(grade 1)8例を用いてメタファーゼCGH、アレイCGHを行った。2倍以上のコピー数の変化をgain、lossとし、それぞれの疾患のうち半数以上の症例で見られた領域で発現差のあるスポットについて検討を行った。 結果:内軟骨腫で20箇所のgain、14箇所のloss、軟骨肉腫で41箇所のgain、16箇所のlossを認めた。両方の腫瘍で共通に認められた領域は、gainが2q12.1-2(60%),6p22(60%),7q11.2(53%)、15q13.2(53%)、21q22.1(60%)、22q13.3(60%)、lossが1q21.3(87%)、6p21.3(73%)、7q22.1(60%)、19q13.2(67%)、20q11.2(93%)、20q13.1-2(80%)であった。腫瘍特異的な領域は、gainが内軟骨腫で9q34、軟骨肉腫で11p15.4、12q13.2、17q12、lossが内軟骨腫で13q12、軟骨肉腫で13q14であった。標的遺伝子としては、低悪性軟骨肉腫では、CHK2,RARA、DTX3、内軟骨腫では、WDR5のgain等の特異的な変異がみられた。定量RT-PCRでは、mRNA発現量に有意差は見られなかった。 考察:メタファーゼCGHでは、内軟骨腫、低悪性軟骨肉腫の間に明らかなコピー数の変化を認めなかった。しかし、アレイCGHを用いた検討では、個々の遺伝子のコピー数の差が検出可能であり、内軟骨腫、低悪性軟骨肉腫に特異的な領域を検出した。今回の検討では症例数が少なく、DNAコピー数とmRNAの発現レベルに相関を認めなかった。 まとめ:アレイCGHを用いて内軟骨腫と低悪性軟骨肉腫のDNAコピー数の異常を検出可能であった。アレイCGHはメタファーゼCGHでは検出できないレベルのDNAコピー数を検出するための有用な手段であった。アレイCGHによって検出された染色体領域から良性軟骨腫瘍、低悪性軟骨肉腫に特異的なDNAコピー数異常を検出した。今回の検討では症例数が少なく、DNAコピー数とmRNAの発現には有意な相関は見られなかった。しかし、検出された候補遺伝子は、軟骨性腫瘍の悪性化に関与するゲノム異常領域の同定や、腫瘍化・進展メカニズムの解明、新たな分子標的治療へのターゲットの同定などの研究対象としても有用であると考えられる。
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