本年度は、eNOSトランスジェニックマウスを用いて精子形成に対するNOの影響について主にIn vivoで検討を行った。 1トランスジェニックマウスの作成 In vivoでNOの精細胞への影響を検討するためeNOSトランスジェニックマウスを作成した。C57BL/6雄マウスにendothelium-specific preproendothelin-1プロモーターを用いて、内皮細胞にbovine eNOSの発現を亢進させた。そのマウスを交配させ、4週齢の時点で尾からDNAを抽出し、PCR法により、transgeneを調べheterozygousトランスジェニックマウスとwild typeマウスをそれぞれeNOS-Tg群、WT群とした。さらに、eNOS-Tg群では、数匹のマウスの精巣を摘出し、Western blotting法にて精巣内でのeNOSの発現の亢進を確認した。 2精子形成障害モデルの作成 WT群で停留精巣モデルを作成した。作成方法は、以前われわれが報告した方法を用いた。エーテル麻酔下にマウスの下腹部を約2cm切開し、精巣を陰嚢から腹腔内に移動させ、鼠径輪を閉じることにより停留精巣モデルを作成した。約2週間で精細胞は障害され、精祖細胞とセルトリ細胞のみとなった。その間の精子形成障害過程を観察し、本実験系において精子形成障害過程を比較検討する上で適切と考えられる観察ポイントを検討した。具体的には、停留精巣作成後数日ごとにマウスを屠殺し精巣を摘出し、精子形成状態について病理組織学的検討を行った。 3病理組織学的検討 病理組織学的検討は、H-E染色あるいはPAS染色を行い、精細管中のセルトリ細胞ならびに精細胞(精祖細胞、精母細胞、精子細胞)の数を精細管あたりでカウントし、セルトリ細胞と各精細胞数との比で停留精巣後の精子形成状態を検討した。
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