研究課題/領域番号 |
18390440
|
研究機関 | 大阪医科大学 |
研究代表者 |
東 治人 大阪医科大学, 医学部, 助教授 (40231914)
|
研究分担者 |
勝岡 洋治 大阪医科大学, 医学部, 教授 (10051757)
木山 賢 大阪医科大学, 医学部, 非常勤講師 (10351404)
高原 史朗 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70179547)
梨井 康 国立成育医療センター(研究所), 移植・外科研究部, 室長 (60321890)
右梅 貴信 大阪医科大学, 医学部, 助手 (90388265)
|
キーワード | CTLA4 / ICOS / CD28-superagonist / CD28-B7 / レンチウイルス / MF-1 / HGF / MSP |
研究概要 |
1)Neo CTLA-4-Ig, Anti-ICOS-Ig,およびCD28-SA-Ig,を併用することによって非常に高率な免疫寛容導入に成功した。 移植腎を永久生着させるためには、移植術後早期の強力な免疫抑制と長期にわたる維持免疫抑制療法が必要であるが、免疫低下による重症感染症や悪性腫瘍の発症が大きな問題となる。これを解決する最良の方法として免疫学的寛容の導入がある。これまでいくつかの動物モデルで免疫学的寛容導入の成功例が報告されているが、臨床応用における大きな問題点はその導入効率が最も高い方法でも80%程度で、100%に近い導入率を実現した報告はないことである。免疫寛容導入の際には、免疫抑制剤を使用することなく移植腎組織に対する特異的な免疫不応答を誘導するため、CD28-B7pathwayが確実に阻害されない場合には、激烈な拒絶反応を生じ移植腎は機能廃絶に陥る。このことは移植腎ドナーが数少ない本邦では、たとえ10-20%の確率でも臨床的な治療法として確立することは難しい理由である。これらのことから今回我々がラット腎移植モデルにてNeo CTLA-4-Ig + Anti-ICOS-IgによるCD28-B7pathwayに加えて従来の誘導方法とは全く異なるCD28SA Igによるsuppressor T cell誘導による方法を併用することにより、非常に高率な免疫寛容の導入に成功したことは、今後移植腎の永久生着を可能にする上で飛躍的な進歩であると考えられる。 2)改良型Neo CTLA4-Igの導入(安全な免容慣用の導入)。 これまで我々はCTLA4-Igを用いた免疫寛容の導入を行ない成果を上げてきたが毒性が問題となり、臨床応用が遅れていた。今回Dr.Sayeghらのグループがより安全性を確立したNeo CTLA4-Igの作成に成功し我々がこれを導入することが可能となった。このことは今後の移植医療において非常に画期的である。 3)アデノウイルス並みの使いやすさ、高い導入効率、そして目的の遺伝子を標的組織のゲノム内に入れることで半永久的な遺伝子発現を可能にする"レンチウイルス"をベクターとして腎組織への遺伝子導入に成功した。 これまで、腎組織における遺伝子導入においては確立された手法は未だ報告されていなかったが、我々はアデノウイルス並みの使いやすさ、および導入効率を持ち、また、目的遺伝子が目的組織のゲノムに入ることで半永久的な遺伝子発現、および蛋白合成を可能にするレンチウイルスをベクターとして腎組織への遺伝子導入に成功した。このことは、遺伝子治療の領域では革命的な発展であり、今後の腎疾患に対する治療に大きく寄与するものと思われる。 3)HGFとMacrophage stimulating Factor (MSP)のキメラであるMetron factor 1 (MF-1)は、HGF,およびMSPの持つ"アポトーシス抑制作用"をHGF、MSPそれぞれのfactorに比較して有意に強く認めるが、悪性腫瘍を誘発させる作用はほとんど認めない。 我々はHGFが慢性拒絶反応の発症を防止することを既に報告したが、長期的なHGF全身投与は悪性腫瘍を誘発する危険性が示唆され、その臨床応用には充分な注意が必要である。この見地から今回Metron factor 1 (MF-1)の遺伝子導入を実現することは今後のCAN治療、さらには、慢性腎疾患の治療全般において非常に大きく寄与するものと思われる。
|