研究概要 |
子宮体癌に認められるdominant negative作用を有するp53変異(p53 DNE変異)が体癌の高悪性化を誘導する機序を明らかにすることを目的に以下の研究を行った。 (1) 野生型p53を有する体癌細胞株HHUAにp53 DNE変異(R273H)と持たないrecessive変異(R213Q)を導入し、p53DNE変異が体癌の浸潤能、運動能を促進する分子機序を解明する。 (2) 野生型p53を欠失している卵巣癌細胞株や骨肉種細胞株にp53 DNE変異を導入し、p53変異のgain-of-function作用により癌細胞の浸潤および運動能が促進されるかどうかを検討する。 その結果、以下のことが明らかとなった。野生型p53を有する子宮体癌細胞HHUAに導入したp53DNE変異(R273H)は強いdominant negative作用を示し、野生型p53の標的遺伝子であるp21、Bax並びにM)M2のpromoterの転写機能を有意に抑制していた。更に、HHUA細胞の浸潤能および運動能が有意に促進されることが認められた。この変化と関連して、R273H細胞では、癌細胞の浸潤を抑制する作用のあるMaspin, PAI-1およびKAI1のmRNA発現が有意に低下していた。一方、P53 DNE変異(R273H)の発現はp53を欠失している癌細胞の浸潤能および運動能には関与しなかった。すなわちR273Hは、gain-of-function作用ではなく、野生型p53遺伝子の転写機能を阻害し、癌浸潤抑制遺伝子Maspin, PAI-1, KAI1の発現を抑制することで浸潤能および運動能を促進すると考えられた。R213Qには浸潤能、運動能促進作用は認められなかった。
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