研究概要 |
本年度は、母体栄養障害の胎児脳への影響、特に感染に対する低タンパク食の影響に関して研究を進めた。また、栄養障害の胎児脳に与える影響の機序を調べるためにRNAの網羅的検索を行った。 妊娠マウスに通常エサに比ベカロリーは同じでタンパク質成分を半分にしたエサを与え飼育した(低栄養群)。(1)妊娠中の母体体重増加は両軍で有意差はなかった。(2)妊娠17日目、生後7日目で低栄養群の胎仔の体重減少が見られた。生後妊娠14日齢で0.01mg/ml×30μ1のLPSを経膣的に投与し妊娠17日目に胎仔脳のPDGF-RAlpha, 0lig2, ActCapase3の免疫染色を行った。これらは各群間で変化が見られなかった。生後7日目に行ったMBP,GFAP,nestinの染色では、MBPが低栄養LPS群で有意に低下、GFAPは変化なく、GFAPとnestinの2重陽性割合はLPS投与群で増加していた。日齢19日では各群で神経膠細胞前駆細胞の有意な変化は見られず、アポトーシスもこの時になかった事になる。また、生後7日目にLPS群で活性アストロサイトが活性化していること、低栄養LPS群のみで成熟オリゴデンドロサイト(OL)の有意な減少が示された。 次に、妊娠17日目の胎仔の肝臓、心臓を用いRNAの網羅的解析を行った。低栄養群では、Igf2とそのBd蛋白の有意な低下が見られた。これに対し、Igf1の有意な変化はなかった。Epigeneticな変化を見るために、Igf2遺伝子のP1-promoter領域のHistoneメチル化を調べた。低栄養群ではH3,H4領域でメチルに有意な変化が見られた。Igf2はOLの発育を増進し、Igf1はその分化を調節している。OLの減少はIgf2の減少に関与すると考えられた。本研究では低タンパク質の食事がIgf2のepigenetic制御異常を生じ、これに感染が加わると新生児期の脳内でOLの減少がすることが分かった。
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