胎児の酸素動態を非侵襲的に測定するため、近赤外線分光法による経母体腹壁からの測定システムの開発を行った。センサー、近赤外光分光器、解析ソフトの開発を行い母体腹壁から4cmまでの深度の酸素飽和度の測定が可能になった。ヒトの予備的実験及びミニブタを用いた動物実験では、母体腹壁から胎児の酸素飽和度を精度よく測定することが難しいことが困難であった。しかし、胎児の酸素動態を反映する胎盤の酸素飽和度は我々の方法で測定可能であることを発見した。予備実験を踏まえて臨床的検討を行った。正常妊娠では胎盤の酸素飽和度が70%前後であるのに対して、胎児低酸素状態、胎児発育不全、妊娠高血圧症候群では78%前後と上昇していることが明らかになった。分娩後の検索では、胎盤の酸素飽和度が高い症例では臍帯異常やchorangiosisなどの胎盤の異常が見られた。近赤外線を用い非侵襲的に胎盤の酸素動態を測定することが可能になった。本法が新しい胎盤機能検査、胎児機能検査になることが判明した。
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