研究課題
基盤研究(B)
ヒト胚はその着床過程において子宮内膜内に一塊となって埋没するが、その後母体の血流と直接接するようになり、胚の栄養膜層から分泌されたHCGは、母体血流を介して卵巣黄体を刺激し、プロゲステロン産生を維持して子宮での自らの着床継続を可能とする(内分泌系による母体-胚間の相互応答)。これらの過程に平行して近年我々は免疫細胞も胚の存在を認識し母体の卵巣と子宮内膜に働きかけ胚着床を誘導する可能性を見いだしてきた(免疫系による母体-胚間の相互応答)。さらにHCGは免疫細胞にも作用し、免疫系と協調して胚着床機構を促進していることが示された(内分泌・免疫系のネットワークによる母体-胚間の相互応答)。本研究ではこれらの新しい概念に基づき着床現象における分子メカニズム(特に反発因子の関与と血小板の誘導機構)を明らかにし、胚着床障害症例に対する安全かつ有効な診断法と免疫細胞を活用した治療法の確立を推進した。具体的には反発力を誘導するEph-ephrinが胚の子宮内膜上皮への接着のタイミングを決定する因子として重要である可能性が示され、さらに血小板が絨毛外栄養膜細胞の母体動脈内浸潤の誘導のみならず、黄体形成期の新生血管の構築誘導にも関与しているという新しい組織再構築の概念が提示された。また免疫系による母体-胚間の相互応答の応用として、患者自身の末梢血免疫細胞を用いて子宮内膜分化を促進する方法の臨床応用を試みたが、その結果胚着床障害症例に40%前後の妊娠率を得るなど有意な成果を挙げることができた。現在この方法は畜産の分野でも応用が試みられており、今後さらなる発展が期待される。また本研究の成果として自己の血小板を用いた新しい治療を考案する糸口になったことも特記すべき点として挙げられる。
すべて 2007
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