研究概要 |
神戸大学病院でインフォームドコンセントにより同意が得られた後に子宮全摘術が施行され、組織学的に子宮平滑筋腫と診断された検体を研究対象とした。子宮筋腫組織から得られた筋腫細胞と子宮筋腫に近接した正常子宮平滑筋から得られた正常子宮平滑筋細胞をそれぞれ無血清培地で培養し、また子宮内膜組織は既報のマイクロメッシュ法で子宮内膜上皮細胞分画と子宮内膜間質細胞分画に分けて分離培養した。 子宮筋腫細胞と正常子宮平滑筋細胞および子宮内膜上皮細胞と間質細胞の無血浩培養系に種々の濃度のSPRM(CDB2914あるいはJ867)を10^<-8>M,10^<-7>M,10^<-6>M,10^<-5>M添加し、viable cell numberをMTT法で経時的に調べた。増殖能に関しては、BrdU取り込みを調べ、PCNA発現動態を免疫染色法及びウエスタンブロット法で経時的に調べた。さらに、上記培養細胞におけるアポトーシス誘導因子(Fas、Fas ligand、TNF alpha、p53、bax、bad、Bok、Bak、Bid、Bik, Bim, noxa, puma, Siva, Apaf1, TRAIL, death receptor, caspase-3,-6,-9)およびアポトーシス抑制因子(bcl-2、bcl-XL、survivin、XIAP)のmRNA発現に及ぼすSPRMの影響を定量的RT-PCR法にて、またcleaved poly(ADP-ribose) polymerase(PARP)蛋白発現に及ぼす影響をウエスタンブロット法にて、経時的に検討した。また、上記培養細胞におけるPR-AとPR-B発現を経時的にウエスタンブロット法により調べた。 その結果、SPRMは子宮筋腫細胞の増殖能を抑え、アポトーシスを促進するが、正常子宮平滑筋細胞の増殖とアポトーシスには影響を及ぼさず、筋腫細胞に特異的に作用することを認めた。この筋腫細胞へのSPRMへの特異的作用は筋腫細胞と正常子宮筋細胞でのprogesterone Receptor(PR)-AとPR-Bの発現、態度の違いに由来することが分かった。PR-Bha子宮筋腫細胞での発現が強く、PR-A発現には筋腫細胞と正常子宮筋細胞で差がないことを確認した。
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