研究概要 |
近年、日本において上皮性卵巣癌(卵巣癌)は著しい増加を示している。本研究においては、卵巣癌の発癌機構を明らかにするとともに、卵巣癌の組織型を考慮に入れた個別化した治療法の開発ならびに分子標的治療への応用を目的とする。今回、われわれは、国立がんセンター,清野透らとの共同研究において、新規にHPVなどの癌ウイルスを用いることなく、ヒト卵巣腫瘍で観察されるCDK4とcyclin D1の活性化によって、染色体が安定した不死化卵巣表層上皮細胞株(HOSEC)を世界で始めて樹立した。この細胞株を用いて、先に米国University of Michigan Medical School, Kathleen R.Choらとの共同研究により、マウスの卵巣表層上皮細胞にPTENならびにWnt/β-cateninの不活化をもたらすことによって類内膜腺癌類似の腫瘍を形成させることができたので、これと同様に不死化HOSEC細胞にPTENの不活化をもたらしたが、足場非依存性増殖能の亢進はみられなかった。ヒトHOSE細胞で多くの遺伝子の導入を行ったが、p53の不活化とk-rasの活性化が足場非依存性増殖能を高める上で重要であり、また、c-myc+bcl-2あるいはAKTの導入で造腫瘍能を獲得することが明らかとなった。さらに、これらの腫瘍は、c-myc+bcl-2群はやや上皮様の性格を有し、AKT群ではやや肉腫様性格を示した。また、間葉系細胞との同時移植による方法を検討したが、組織構造に有意な変化がみられなかった。
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