研究課題/領域番号 |
18390456
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
吉崎 智一 金沢大学, 医学部附属病院, 講師 (70262582)
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研究分担者 |
室野 重之 金沢大学, 医学系研究科, 助手 (20345622)
脇坂 尚宏 金沢大学, 医学系研究科, 助手 (70377414)
近藤 悟 金沢大学, 医学部附属病院, 医員 (70436822)
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キーワード | 上咽頭癌 / Epstein-Barrウイルス / LMP1 / ウイルス複製 / メチル化 |
研究概要 |
Epstein-Barrウイルス(EBV)は上咽頭がんとの病因論的関連が確立されたヘルペスウイルスである。一般にEBVは体内で潜伏感染していて、ウイルス産生スウィッチはオフになっている。EBVが潜伏感染しているBリンパ球ではEBNA-1という核抗原しか発現していない。しかし、上咽頭がん早期病変では100%にEBVがん遺伝子LMP-1およびEBERsが発現している。一方で血中EBV-DNAが多い、すなわち、ウイルス複製が亢進している人は将来上咽頭がんを発症しやすいことが報告されている。 本年度は 1)潜伏感染時発現遺伝子の役割を確認した。すなわち、 ・EBVが潜伏感染状態で発現する膜蛋白1(Latent Membrane Protein-1.LMP-1)は、転移に関連する一連のステップを転移促進の方向に誘導することを解明。 ・EBERs(LMP-1と同様に上咽頭がん細胞において発現しているEBウイルス小RNA)核内で二本鎖RNAを形成してプロテインキナーゼR(PKR)を阻害して細胞の増殖能を促進する。 ・EBERs発現ベクターを作製し、正常腎上皮細胞MDCKに形質導入し、形質転換能および増殖能を検討したところ、軟寒天培地コロニー形成能、すなわち造腫瘍性が亢進。 ・上咽頭がん組織において、EBERsの発現はT病期が進行するにつれ増加する傾向にあった。一方LMP-1の発現は頸部リンパ節転移と有意に相関した。 以上より、LMP-1は主として浸潤転移能を活性化、EBERs発現は腫瘍増殖能を促進することが判明した。 2)EBV潜伏感染細胞NPC-KTに対しウイルス複製サイクルを誘導することにより、NPC-KT細胞は効率に溶解すること、すなわち、ウイルス産生により細胞はがん化せず死に至ることが判明した。
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