すべての上咽頭がん早期病変においてEBVがん遺伝子LMP-1およびEBERsが発現している。台湾における大規模前向き研究の結果、ウイルス増殖サイクルの活性化は上咽頭がん発症のリスクファクターであることが判明した。 昨年までに以下のことを解明した。 1) EBV膜蛋白1LMP-1は、転移促進の方向に誘導すること、EBERsはプロテインキナーゼR(PKR)を阻害して細胞の増殖能を促進すること 2) EBV潜伏感染細胞NPC-KTに対しウイルス複製サイクルを誘導することにより、細胞はがん化するどころか細胞死に至ること。 3) 上咽頭がん細胞株C666-1ではLMP1は、非常に少量しか発現していない。 4) 上咽頭がん細胞内のEBウイルスゲノムはメチル化を受けている。アザシチジンによる脱メチル化およびトリコスタチンAによるアセチル化により、p16などのヒト由来遺伝子発現が活性化された。しかし、いずれの処理によってもウイルス由来のLMP1発現は誘導されなかった。さらに、EBV複製再活性化も誘導されなかった。 最終年度である本年度は ブチル酸ナトリウムでウイルス複製を誘導する前後のEBVLMP1のプロモーターメチル化の比較から、ウイルス複製により脱メチルかがおこり、複製直後のEBV感染細胞内のLMP1発現は複製誘導前のLMP1発現量よりも増加することが判明した。以上より、EBVLMP1発現は上咽頭がん発癌過程に密接に関与する。しかし、一度がん化した後のウイルス遺伝子発現はがん細胞にあまり影響を及ぼさないことが示唆された。
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