本研究は、内耳再生するニワトリと内耳再生しないマウスとで、傷害後の内耳組織のプロテオーム比較解析を行い、内耳再生誘導因子を同定することを目的とする。昨年度は、初期胚を用いた発生段階でのマイクロアレイ解析を行ない、内耳形成関連候補因子(未知遺伝子を含む)について、発現部位・発現時期を検討した。 本年度は、上記で得られた候補因子を障害内耳の有毛細胞または支持細胞に導入する為の手法を、当研究室のニワトリ初期胚への遺伝子導入法に基づき確立した。 1.電気穿孔法によるin vitro系での一過性発現 (1)ニワトリ:babyからyoung adultの器官培養では可能 (2)マウス:neonatalの器官培養では可能、young adultでは器官培養自体が難しく不可能 2.ウイルスベクターによるin vivo系での一過性または恒常的発現 (1)ニワトリ:Arcus virusによる恒常的発現は可能 (2)マウス:AAVによる一過性発現は可能、Lenti virusによる恒常的発現は限定された投与期間(マウス胚E12.5前後のin utero)でのみ可能 ウイルスベクターの投与法は、半規管への持続インフユージョンが低侵襲で良い。但しLenti virusは、neonatal以降中央階(内リンパ腔)に分布せず、外リンパ腔のlining cellに発現する。 以上の結果より、内耳形成関連候補因子の障害内耳への遺伝子導入法が確立された。
|