研究課題/領域番号 |
18390459
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
暁 清文 愛媛大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (00108383)
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研究分担者 |
秦 龍二 愛媛大学, 大学院・医学系研究科, 准教授 (90258153)
羽藤 直人 愛媛大学, 医学部附属病院, 講師 (60284410)
兵頭 純 愛媛大学, 医学部附属病院, 講師 (30423453)
竹田 将一郎 愛媛大学, 医学部附属病院, 医員 (70403821)
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キーワード | 突発性難聴 / 一過性虚血 / 治療の窓 / プロサポシン由来合成ペプチド / ゼラチンハイドロゲル / インシュリン様細胞増殖因子 / 内耳低温療法 / アポトーシス |
研究概要 |
内耳はエネルギー需要が極めて高い組織であり、急激な血流低下や血流遮断はエネルギー不全をきたし難聴を惹起する。このため内耳虚血は突発性難聴の有力な原因の一つとされている。本研究では、長期生存可能な一過性内耳虚血の動物モデル(スナネズミ)を作成して虚血障害の病態解明を進めるとともに、"therapeutic time window"(治療の窓)に基づいた治療法の検討を行った。その結果、(1)プロサポシン由来合成ペプチド(prosaposin-derived peptide)2mg/kgを虚血直後、1、2、3日後の4回にわたり投与したところ、虚血障害によるABR閾値上昇は著明に軽減された。組織学的にも有毛細胞の脱落は抑制された。(2)虚血負荷30分後、ゼラチンハイドロゲルに浸漬させたIGF-1(インシュリン様細胞増殖因子)を正円窓上に置いたところ、内耳障害は機能的にも組織学的にも有意に防御された。内耳のように頻回の薬剤局所投与が困難な場合は、ゼラチンハイドロゲルの除放効果を活用することにより、一度の投与で同様の効果が得られることが分かった。(3)内耳低温療法については、虚血1時間後までに冷却を開始した場合は障害防御効果が認められたが、3時間後に開始した場合の効果は限定的で、さらに6時間後に開始した場合は無効であった。 これらの結果は虚血障害の治療を考える上で極めて重要な知見といえる。虚血後の病態は時間とともに変化するので、どのような治療も時期を逸すれば効果は限られる。突発性難聴に対してもtherapeutic time windowを想定し、病変部位や病期に応じた治療戦略の構築が必要であろう。
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