研究概要 |
平成19年度は,平成18年度に確立した細胞培養法,細胞播種法,手術法を用いて,培養ヒト角膜内皮細胞と各種実質から再生角膜を再構築し,その機能をin vivoで検討した。まず拒絶反応のないモデルとしてヌードラットへの移植を行った。同種同系のラット角膜から全層角膜移植片を切り出し,内皮を滅菌綿棒で擦過除去したところへ蛍光色素であるDilでマーキングした培養竺ト角膜内皮細胞またはスフェアを播種しラット角膜上皮と実質にヒト角膜内皮が付着した移植片を作成した。この移植片をヌードフットへ全層移植した。術後1ヶ月の間,細隙燈顕微鏡により,移植角膜の状態,拒絶反応の有無を観察した。また機能回復の指標として角膜厚の測定を行い,透明治癒率の検討を行った。角膜内皮細胞の形態観察を行った。その結果,培養ヒト内皮細胞が生体内において機能していることが確認された。 内皮移植方法として,最近臨床で行われるようになってきたDescemet's stripping automated endothelial keratoplasty(DSAEK)の術式において,培養角膜内皮細胞を応用する方法の長期の有効性を検討した。まず家兎角膜から,マイクロケラトームを使用して,厚さ100-150ミクロンの角膜実質フラップを作成した。このフラップを培養皿におき,その上に人角膜内皮細胞を播種して,DSAEK用の移植片を作成した。DSAEKの術式に準じて,培養角膜内皮細胞をのせた移植片を,家兎角膜内皮面に移植した。その結果,術後3ヶ月にわたって,角膜の透明性を維持することができた。 平成19年度にはさらに,角膜実質細胞の組織前駆細胞と通常の培養細胞との角膜再生医療における有用性を比較した。ヒト角膜実質細胞の組織前駆細胞の単離にはニューロスフェア法を用いた。すなわち,実験用に輸入したヒト角膜から実体顕微鏡下で上皮層と内皮層を剥離し,実質のみとした。角膜実質をコラゲナーゼ処理し,角膜実質の単一細胞を取得した。これら単一細胞を培地に播種し,1週間の浮遊培養を行った。この方法により未分化な組織前駆細胞を含んだ球状細胞塊であるスフェアが得られた。蛍光色素であるDiIで標識した角膜実質細胞のスフェアを多孔性のゼラチンに播種し,これを家兎の実質内に挿入した。播種した角膜実質細胞スフェア周囲に多くの細胞外基質が産生されていることが確認され,角膜実質細胞の組織前駆細胞の有用性が確認された。
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