研究課題/領域番号 |
18390465
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
玉置 泰裕 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (20217178)
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研究分担者 |
柳 靖雄 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (90376442)
片岡 一則 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授 (00130245)
古川 貴久 大阪バイオサイエンス研究所, 発生生物学部門, 研究部長 (50260609)
近藤 峰生 名古屋大学, 医学部附属病院, 准教授 (80303642)
田原 秀晃 東京大学, 医科学研究所, 教授 (70322071)
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キーワード | ナノバイオ / 移植・再生医療 / マイクロアレイ / 免疫学 / トランスレーショナル・リサーチ |
研究概要 |
加齢黄斑変性(AMD)は、欧米では成人失明原因の第一位であり、特に脈絡膜新生血管(CNV)により惹起される滲出型AMDは、視力予後が不良で、その治療法の開発は急務である。そこで、AMDに対する新規治療法の開発を目的として、CNVに対する抗血管新生療法、および障害された網膜再生医療の両面から、新しいアプローチを試みた。 Polyion complex (PIC)ミセルは静電相互作用により形成される直径数十nmのナノ粒子であり、EPR効果により固形腫瘍に高い集積性を示す。FITC-P (Lys)を内包したPICミセルをラットCNVモデルに静脈内投与した検討では、CNVにおける集積は投与168時間後まで持続し、ラットCNV部に高い集積性を示した。PICミセルはCNVに対するドラッグデリバリーシステムとして有用である可能性が示された。光線力学療法(PDT)はAMDに対する現在の標準的治療法であるが、問題点として施行後のCNV再発がある。AMDに対するPDTの効果を高めるためには、光増感剤をCNV領域へ選択的に送達することと、CNV領域での効果的な光力学反応を惹起することの双方が必要である。デンドリマー型光増感剤は内核に位置する光増感剤が高濃度においても凝集しないという性質により、高効率の光力学反応を惹起することが期待できる。デンドリマーポルフィリン(DP)をミセル化したDPミセルにより、CNVへのDPの高い集積性が得られ、より低いエネルギー照射のPDTによりCNV閉塞が可能となった。DPミセルを用いたPDTは、CNV閉塞効率が高いのみならず、正常な網脈絡膜血管や皮膚に対する障害も少ないことが示された。デンドリマー型光増感剤とそのミセル化はCNVに対するPDTにおいて非常に有用であることが強く示唆された。 生体内において遺伝子の導入部位の制御が可能となればAMDを含む眼局所の疾患に対する遺伝子治療にとって非常に有用である。光応答性遺伝子導入はDNA/ペプチド複合体とともに光増感剤を作用させ、エンドソーム膜を障害することにより導入効率を上げる遺伝子導入法であるが、その細胞毒性のためin vivoには応用されていない。そこで、DNA/ペプチド複合体がデンドリマー型光増感剤(デンドリマーフタロシアニン)の外殻に覆われた新規三元系コンプレックスを調整し、ラット結膜下へ注入した後にPDT用レーザーを照射したところ、光線照射部位に特異的なレポーター遺伝子の発現上昇を認め、光線照射により眼組織への遺伝子導入を制御可能な遺伝子キャリアとなりうることが示唆された。 AMDで障害される黄斑形成に関わる遺伝子やその形成の分子機構について検討するため、発生期のアカゲザル網膜を黄斑部と周辺部に分けて採取し、サルゲノムマイクロアレイを用いて黄斑部と網膜周辺部での遺伝子発現比較を行なった。さらに、黄斑部に高い発現がみられるもの、あるいは黄斑部の形成時期に特異的に発現する遺伝子群を選び、これらの発現をin situハイブリダイゼーションによって検討した。本研究は、黄斑形成の分子機構の解明、さらには錐体の再生医療を可能にする基盤研究になりうると期待される。
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