研究概要 |
網脈絡膜疾患の病態解明と治療法の開発を目的とした研究を行った。加齢黄斑変性については、complement factor H (CFH)遺伝子のY402H多型が、日本人において本疾患さらにポリープ状脈絡膜血管症の発症においても関連していることを確認し、また血清中のC反応性蛋白(CRP)濃度がそれらの疾患を有する患者では上昇していることを示した。(Ophthalmology, in press)。またこれらの疾患に対して近年広く行われている光線力学療法(PDT)の功罪にっいて様々な検討を行った結果、PDT施行後には脈絡膜循環の低下により一時的な網膜機能の低下が生じることが判明した(IOVS, in press)。自家網膜色素上皮細胞移植により加齢黄斑変性の治療を目標とする名古屋大学工学部との共同研究においては、ARPE19細胞に磁性微粒子を効率よく取り込ませることに成功し、その際プラスミドの細胞内導入も促進されることを明らかにした。さらに磁石を用いることにより、磁性を獲得した細胞を誘導・移動することが可能であることをin vitroで確認した。 遺伝性疾患に関しては、常染色体優性視神経萎縮のOPA1遺伝子異常と表現型について詳細な検討をおこない(Ophthalmology,2006)、本疾患では網膜内層の異常が網膜電図(IOVS,2007)及び光干渉断層計(投稿中)にて検出されることを明らかにした。 動物実験では、マウスの毛様体に網膜視細胞の再生が可能なGermial zoneが存在することを見出した(投稿中)。この発見は、視細胞変性を来たす様々な網脈絡膜疾患に対して、自家視細胞移植による治療の可能性が示唆された。また開発中の網膜色素変性症の中型モデル動物であるロドプシン遺伝子変異(P367L)ウサギは、10ライン確立し現在繁殖中である。
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