研究概要 |
1. 培養角膜内皮シート移植法の確立 培養角膜内皮シート移植法を確立するため、角膜内皮を未分化のまま増殖させる方法および、移植に用いるキャリアの開発について検討を行った。これまでに、sphere培養によってヒト角膜内皮細胞から、自己複製可能な未分化細胞を単離することに成功している。得られたsphereをコラーゲンコートした接着性培養皿上に播種した結果、角膜内皮細胞が増殖・進展することを確認した。次に移植に用いるキャリアについて、アテロコラーゲンやヒアルロン酸に接着因子を加えもの等について細胞培養および透明性を検討した。細胞接着および透明性が良好であることから、アテロコラーゲンおよび新規開発シートを選定した。 2. 内皮細胞源の同定 神経堤特異的マーカーのP0タンパクをeGFPで標識したTGマウスの解析により、虹彩実質細胞が神経堤由来であることが示された。そこで、虹彩実質を角膜内皮の再生のための細胞源候補としてその未分化性および多分化能を検討した。幹細胞マーカーの免疫染色法による解析の結果から、虹彩実質sphereは神経幹細胞マーカー(Sox2, Nestin等)に加え、神経堤細胞マーカー(p75、AP2)を発現していることを確認した。RT-PCRの結果からも、虹彩実質sphereは神経堤細胞および組織幹細胞マーカーを発現していることが示された。さらに分化誘導実験により多分化能を検討したところ、虹彩実質sphereは神経や脂肪細胞、軟骨細胞への分化可能であった。 3. In vivo内皮細胞を増殖させる方法の確立 これまでに、In vivo角膜内皮を採取し、mRNAの抽出・cDNA合成を行った。本年度は、角膜内皮細胞との増殖に関わる遺伝子の発現をマイクロアレイ法により解析した。具体的には、様々な培養条件において角膜内皮を培養した後で、mRNAの抽出・cDNAの合成を行い、in vivoの角膜内皮も含めてマイクロアレイ解析を実施した。その結果、複数の角膜内皮細胞増殖因子候補を絞り込むことに成功した。
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