研究概要 |
ケラチンは現在20種類以上が知られており、上皮細胞において細胞骨格として機能している。本年度の成果として我々は、皮膚表皮細胞、口腔粘膜上皮細胞、角膜上皮細胞、結膜上皮細胞におけるケラチン1,3,4,12,13,10のゲノムメチル化状態を詳細に調べた。方法はBisulfite sequencing法で、手術の際に得られたこれらの上皮細胞よりゲノムDNAを抽出し、キットにてBisulfite処理を行った。結果として、角膜上皮に特異的に発現しているケラチン12に関しては、コーディング領域上流5kbから下流3kbまでのほぼ全領域で角膜上皮細胞では低メチル化状態にあり、その他の上皮細胞では高メチル化状態にあった。またそのパートナーであるケラチン3においてもコーディング領域の上流のプロモーター領域においてケラチン12と同様なメチル化状態にあった。また結膜上皮や口腔粘膜上皮で優位に発現しているケラチン4,13については、予想通りそれらの細胞種において、コーディング領域上流のプロモーター領域において低メチル化状態にあった。一方で皮膚表皮細胞で特異的に発現しているケラチン1,10については細胞種によるメチル化の違いは認められなかった。これらの結果は細胞種によって異なるケラチン発現の違いは、ケラチン3,4,12,13においてはゲノムメチル化によるエピジェネティックな転写阻害による制御が主体であるが、ケラチン1,10ではそれ以外の制御様式、例えば転写因子の構成による違いなどにより制御されていることを示唆した。
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