研究概要 |
本研究では、再生医学と遺伝子治療の側面から角膜組織の治療法を開発することを日的としている。再生医療では、問葉系細胞またはES細胞などを培養・分化させ、角膜を再生する技術を確立させることで、自らの細胞から作製した角膜を移植する治療法を目指している。遺伝子治療では、角膜組織におこる疾患に対処すべく、遺伝子やタンパクを特異的に発現させ、細胞治療では、適切な細胞を移植することによって、角膜移植を必要としない、角膜組織の治療法を開発することを目的としている。 1.遺伝子治療関連 ヒトの角膜先天異常疾患において形態形成遺伝子Pax6やEyes absent等の変異を新たに多く発見し、その臨床表現型の検討、invitro生化学的検討、変異体の動物へのin vivo導入実験等の機能解析を進めた。角膜形成におけるこれらの遺伝子の意義を明らかになり、この成果は、角膜再生研究の基礎となる。 2.細胞治療関連 ムコ多糖症モデルマウスの混濁した角膜にマウス正常細胞を移植し、角膜の透明化に成功した。また、骨髄・子宮内膜・腔帯血由来の間葉系細胞を単離、培養し、細胞表面マーカー、gene chip(Affymetrix)を用いたプロファイリングによって細胞の有する性格を詳細に検討し、上記の移植に適する細胞を選定した。 3.再生医療関連 ヒト角膜の性質を明らかにするために、ヒト強膜細胞およびヒト角膜実質細胞を初代培養し、細胞表面マーカー、gene chip(Affymetrix)を用いたプロファイリングを行い、発生学的に由来を同じくする角膜と強膜の違いを検討した。強膜細胞に強く発現していた遺伝子は、cartilage paired class homeoprotein1、eyes absent homolog2、glypican4、prostaglandin E receptor 1、secreted frizzled-related protein 2、Microfibril-associated glycoprotein-2、elastin、collagen,typeVIII,XI,XVなどであり、角膜実質細胞に強く発現していた遺伝子は、neuritin1、chemokine ligand2,3,5、interleukin8、annexin A10などであった。これらのデータを角膜実質の再生に役立てる。 同時に角膜内皮の再生を日指し、ヒト角膜内皮細胞の遺伝子導入による寿命延長を行った。不死化角膜内 皮細胞の詳細な解析を行い、免疫不全マウスへの移植を行う予定である。
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