研究課題
角膜内皮細胞は一旦障害され細胞死に至ると、通常再生されず、障害を受けた細胞周囲の細胞がその機能を補う。内皮細胞障害が広範囲に及べば、角膜は混濁し視力が低下する。これまで、治療には角膜移植を必要とし、角膜移植合併症や、患者負担が大きい点などが問題であった。従って、薬物治療などによる内皮機能温存の研究や、角膜内皮機能の更なる解明のためには、ヒト角膜内皮細胞株の樹立が必須であった。今回、我々は、小児の摘出眼球から角膜内皮を単離、培養し、以下のとおり株化に成功した。片眼の網膜芽細胞腫に罹患し、患眼の摘出に至った3歳児の摘出眼球を、インフォームドコンセントを得て研究試料とした。眼球の角膜内皮を顕微鏡下で単離し培養した。初代培養細胞にレトロウイルスベクターを用いて不死化遺伝子HPV16 E6E7、hTERT、cdk4、cyclinD1を、単独あるいは種々の組み合わせで導入し、全10種類の遺伝子導入細胞をクローンニングした。全10種類(#1〜#10)の遺伝子導入細胞における導入遺伝子の発現を、Western blot法で解析した。各遺伝子の蛋白発現は下記の如くであった。#1 cdk4/cyclinD1、#2 cdk4/cyclinD1/hTERT、#3 cdk4 #4 cdk4/hTERT、#5 cdk4/cyclinD1、#6 cdk4/cyclinD1、#7 cdk4/cyclinD1/hTERT、#8 HPV16 E6E7、#9 HPV16 E6E7/hTERT、#10 hTERT。このうち、#4、#5、#6は、世代を経ても分裂速度に変化がなく不死化した。全10種類の遺伝子導入細胞で、蛍光抗体免疫染色によりZo-1、Na-k ATPaseの蛋白発現が、RT-PCR法によりNa-k ATP ase、keratinl2、vdac3、clcn3、slc4a mRNAの発現が確認された。遺伝子導入細胞のポンプ機能はUssing chamberを用いて評価した。ウアバイン0.1mMを添加し、電位差を確認した。平均電位差は、2.0mVであった。以上の特微から、樹立した細胞株は角膜内皮の特性を備えていることが確認できた。
すべて 2009 2008
すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 8件) 学会発表 (5件)
Biol Pharm Bull (In press)
Jpn J Ophthalmol 53(In press)
医学のあゆみ 226
ページ: 965-972
PLoS ONE 3
ページ: e3709
Am J Med Genet
ページ: 2162-2163
Acta Ophthalmol Scand 86
ページ: 462-464
Acta Ophthalmol Scand 86(Epub)
Ophthalmolog 116(In press)