研究課題
神経芽腫は倍数性(ploidy)異常により2群に分類される。これまで私たちは、予後良好腫瘍が3倍体/5倍体で、予後不良腫瘍が2倍体/4倍体で構成され、ploidy異常が神経芽腫の予後を決定していると報告してきた。3倍体細胞に関しては、4倍体細胞がDNA複製後、3極分裂により形成されるという仮説を提唱しているが、その形成機構については未だ明らかになっていない。そこで本研究では、細胞分裂時に染色体の分配に関与する中心体に着目し、その数的異常とploidyおよび.MYCNとの関係について検討した。具体的には、新鮮腫瘍25例を1番染色体動原体領域に特異的なDNA配列(D1Z1)、MYCNおよび2番染色体動原体領域のD2Z1をプローブとして蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)を行い、2倍体腫瘍16例、3倍体腫瘍9例に分類した。また、中心体を可視化するためにγ-tubulin抗体による蛍光免疫染色を行い、中心体の数が3個以上ある細胞が分析細胞の15%以上を占める場合、中心体異常ありと判定した。その結果、中心体の数的異常は2倍体腫瘍の69%、3倍体腫瘍の22%に認められた(P=0.04)。さらに中心体異常はMYCNコピー腫瘍数の増加を示す2倍体腫瘍に多い傾向を示した(p=0.20)。新鮮腫瘍に認められた中心体の数的異常について詳細に検討した結果、過剰な中心体は核周囲ではなく、細胞質に位置していたため、これらは細胞分裂時には機能していないのではないかと推測した。次に、神経芽腫6細胞株について倍数性と中心体数を分析したところ3倍性を示す1株が11%の細胞に中心体の数的増加を示した。そこで、この細胞株の細胞分裂期の形態をtime-lapse顕微鏡を用いて観察したところ、多数の細胞は2極分裂を示したが、一部の細胞は3極分裂を示した。また、3極分裂した細胞は次の分裂では2極分裂を示した。これらの結果から、神経芽腫では中心体の数的異常を示す腫瘍があり、その細胞では実際に3極分裂が生じることが分かった。また、3倍体腫瘍は3極分裂により発生するが、腫瘍として確立してからは、2極分裂により増殖するのではないかと考えられた。今後、2倍体腫瘍と3倍体腫瘍のゲノム異常や発現異常を分析し、両者の差異を明らかにすることにより、3倍体腫瘍の発生機構を解明したい。
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