研究課題
神経芽腫は倍数性(ploidy)異常により2群に分類される。これまで私たちは、予後良好腫瘍が3倍体/5倍体で、予後不良腫瘍が2倍体/4倍体で構成され、ploidy異常が神経芽腫の予後を決定していると報告してきた。3倍体細胞に関しては、4倍体細胞がDNA複製後、3極分裂により形成されるという仮説を提唱しているが、その形成機構については未だ明らかになっていない。そこで本研究では、細胞分裂時に染色体の分配に関与する中心体に着目し、その数的異常とploidyおよびMYCNとの関係について検討した。具体的には、新鮮腫瘍27例と神経芽腫細胞株6例を対象にして、1番染色体動原体領域に特異的なDNA配列(DIZ1)、MIYTCN、および2番染色体動原体領域のD2Z1をプローブとして蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)を行い、乳児(〓18月)3倍体腫瘍8例、乳児(〓18月)2倍体腫瘍9例、小児2倍体腫瘍(>18月)10例に分類した。MYCN増幅を乳児2倍体腫瘍9例中1例、小児2倍体腫瘍10例中5例に認めたが、乳児3倍体腫瘍には認めなかった。2倍体腫瘍にtrisomy1,betrasomy1,pentasomy1をそれぞれもつ細胞が、3倍体腫瘍にtetrasomy1,pentasomy1をそれぞれもつ細胞が5%以上みられた時、ploidy divergenceありと定義した。次に、腫瘍細胞にγ-tubulin抗体による蛍光免疫染色を行い、中心体の数が3個以上ある細胞が分析細胞の5%以上を占める場合、中心体異常ありと判定した。その結果、中心体の数的異常は乳児3倍体腫瘍の13%、乳児2倍体腫瘍の56%、小児2倍体腫瘍の80%、に認められた(P=0.02)。また、中心体異常は3倍体細胞株3株中2株に認められたが、2倍体細胞株3株には認めなかった。乳児2倍体腫瘍にみられたploidy divergenceと乳児3倍体腫瘍にみられたploidy convergenceはそれぞれ、中心体の高頻度異常と低頻度異常に関係していた。3倍体細胞のほとんどに中心体異常はみられないので、3倍体細胞は2極分裂により増殖すると考えられた。MYCN増幅と中心体異常の有無との間に関係はみられなかった。中心体異常を高頻度に示す細胞株TGWの細胞分裂期の形態をtime-lapse顕微鏡を用いて観察したところ、多数の細胞は2極分裂を示したが、一部の細胞は3極分裂を示した。これらの結果から、神経芽腫では中心体の数的異常を示す腫瘍があり、その腫瘍細胞では実際に3極分裂が生じていることが分かった。今後、染色体分裂直後の細胞において、セントロメアを指標としたFISH法を行ない、染色体分配の様子を分析する予定である。また、3極分裂により形成される娘細胞の生死をtime-lapse顕微鏡で観察し、3倍体腫瘍の発生機構を解明したい。
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