研究課題
基盤研究(B)
神経芽腫は乳児に発生する予後良好な3倍体(3n)腫瘍と年長児の予後不良な2倍体(2n)腫瘍に大別される。染色体数が変化する要因の1つとして、体細胞分裂時に重要な役割をもつ中心体の異常が知られている。一方、3n神経芽腫は4n細胞の3極分裂により形成されると考えられているが、3極分裂には中心体数の異常を伴うと予想される。そこで、神経芽腫の染色体異常と中心体異常の関連を解析した。乳児と年長児の神経芽腫27例をFISH解析により、染色体ploidy, 1p欠失およびMYCN増幅の有無を調べた。一方、抗γチュブリン抗体と抗βチュブリン抗体による免疫染色により、中心体の数を数え、その増幅の有無を検討した。染色体数が3倍体領域にある神経芽腫細胞株TGWにヒストンGFPを導入し、細胞分裂の様子をタイムラプス顕微鏡により経時的に観察した。腫瘍組織27例を解析した結果、中心体増幅は3n腫瘍ではなく、2n腫瘍において検出された。2n腫瘍は予後良好群と不良群に分類され、年長児では2n細胞のみで構成されるが、乳児では多数の2n 細胞の他に少数の3n細胞と4n細胞が含まれていた(ploidy divergence)。乳児と年長児の2n腫瘍に共通して中心体が増幅していたが、ploidy divergenceが認められるのは乳児2n腫瘍だけであり、両者における中心体異常の発生機構は異なると考えられた。既に神経芽腫においてMYCN増幅は中心体増幅と相関すると報告されていたが、両者に相関はみられず、MYCN増幅は中心体増幅を誘導しないという所見を得た。一方、3n腫瘍では中心体異常は検出されなかった。4n細胞の3極分裂により3n細胞が形成されるという仮説を踏まえると、親細胞である4n細胞に中心体異常があると推測されるが、3極分裂によって形成される3n細胞の中心体数は正常であり、その後3倍体細胞は2極分裂をして増殖すると考えられた。また、乳児の2n腫瘍と3n腫瘍は共通の4n前駆細胞の細胞質不分離により発生すると推測された。3倍体細胞の発生に必要な3極分裂が神経芽腫で生じているかどうかを検証するために、神経芽腫細胞株TGWの細胞分裂の様子を調べた。タイムラプス顕微鏡による経時的な観察により3極分裂を確認するとともに、3極分裂により3つの娘細胞が形成される所見を得た。TGW株は年長児の予後不良神経芽腫由来なので、乳児の3倍体腫瘍に想定される3極分裂と同様な機序で3極分裂が生じているかどうかについては、議論のあるところであるが、神経芽腫細胞は3極分裂を生じるポテンシャルをもつと考えられた。3n細胞は4n細胞を経て3極分裂により形成されるという仮説が支持された。
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