本研究では、ケロイド病態形成の根幹となるケロイド幹細胞について研究をおこなってきたが、ケロイドが元の創傷の範囲を越えて周囲に浸潤していく性質や、過剰なコラーゲン発現といった特的な形質発現について、HtrA1とHSP47が関与することが確認できた。過剰発現の系を昨年度から検討を重ねてきたが、良好な結果がえられなかったため、今年度はノックダウンの系にてケロイド細胞にどのような影響が出るかを検討した。HtrA1のノックダウン後、ケロイド細胞の増殖変化をMTTアッセイにて解析した結果、HtrA1ノックダウン群で、非ノックダウン群に比較し、細胞増殖の低下をみた。また、HSP47のノックダウンにより、コラーゲン発現量の変化をreal time PCRにて検討した結果、コラーゲン発現量の低下を観察した。さらに、HSP47ノックアウト系においてもMTTアッセイにて、HSP47非ノックダウン群に比較し細胞増殖の低下をみた。これらの結果より、HtrA1とHSP47は、ケロイド病態を形成する遺伝子として重要な因子のひとつであり、ケロイド治療のターゲット分子として有力であることが判明した。ケロイドは日常診療において比較的よく遭遇する疾患でありながら、根治療法が存在せず、治療に難渋する疾患であるが、本研究成果は、ケロイドの新規治療薬、新規治療法の開発に貢献する意義があるといえる。
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