研究課題/領域番号 |
18390480
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
前川 剛志 山口大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (60034972)
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研究分担者 |
泉 友則 山口大学, 大学院・医学系研究科, 准教授 (00261694)
笠岡 俊志 山口大学, 大学院・医学系研究科, 准教授 (90243667)
鶴田 良介 山口大学, 医学部附属病院, 講師 (30263768)
小田 泰崇 山口大学, 医学部附属病院, 助教 (40397998)
金子 唯 山口大学, 医学部附属病院, 助教 (50362372)
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キーワード | 重症頭部外傷患者 / 脳脊髄液 / 網羅的タンパク質解析 / 液体クロマトグラフィー / 質量分析装置 / 脳障害 / 軽度低体温療法 / 候補タンパク質 |
研究概要 |
平成19年度は二次元液体クロマトグラフィー・質量分折システム(2DLC-MS/MS)を用いて重症頭部外傷患者の急性脳障害病態や軽度低体温療法の効果に関連した脳脊髄液(CSF)タンパク質群の同定を行った。 CSF検体として、従来法治療群(NT群)4例、軽度低体温治療群(HT群)6例、および神経学的正常群(Ctrl群)22例(腰椎麻酔時採取)を使用し、タンパク質濃度、SDS-PAGE分析、基礎疾患、および臨床診断に基づいて選別した。CSF中の高濃度タンパク質をアフィニティー除去後、常法にて還元・アルキル化、トリプシン消化を行い、安定同位体試薬iTRAQにて標識後、混合し、2DLC-MS/MSにて分析した。 NT群、HT群各1検体とCtrl群(13検体のプール)の大規模解析から、iTRAQ標識を含む1,425種類のペプチド配列を決定し、合計235種類のタンパク質を同定した。同定タンパク質の主な細胞内局在は"細胞外(52%)"、"細胞膜(19%)"、"細胞質(12%)"であり、各種生物情報を付加したタンパク質カタログを作成した。次に、定量可能なMS/MSスペクトル(約5,000個)から、167種類のタンパク質についての相対定量を行った。Ctrlに対して1.5倍以上の増減を「有意な変動」とした場合、cystatin Cなどの主要CSFタンパク質では変動が見られなかった一方で、NTでは85種類が増加、16種類が減少、HTでは65種類が増加、19種類が減少した。両患者群におけるglial fibrillary acidic proteinの増加やchromogranin Aの顕著な減少、NTでの急性期タンパク質の増加、HTでの接着分子の減少やマトリックス関連タンパク質の増加は急性脳障害における神経組織損傷、炎症反応の亢進、および低体温治療によるこれらの抑制効果を示唆している。
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