研究概要 |
今年度の研究において、新規機能性単糖1,5-D-アンヒドロフルクトース(1,5-AF)及びそれから派生する誘導体などの生体に対する影響について検討を行った。(1)1,5-AF刺激により、2倍以上の変動を示した遺伝子を全抽出し、バイオインフォマティクスに基づいた細胞内シグナルに関連するパスウェイ解析を行った結果、脂質のβ酸化に関連する経路を筆頭に、その他、細胞増殖関連、細胞骨格制御関連、抗炎症作用に関わる遺伝子群の変動が観察された。(2)1,5-AFを高圧・高温の処理を加えることにより生成されるAPPには、増殖性の高い細胞に作用し、細胞周期上のS期の増加とG2/M期の減少、それ以降のアポプトーシスを誘導する性質が存在することが判明した。これらの細胞現象に先行して、APP刺激により顕著に誘導される遺伝子発現パターンについて、細胞現象と関連したパスウェイのカテゴリー名を頻度順に挙げるとNF-кB signaling(炎症反応・細胞生存に関わる経路)、アポプトーシス・細胞周期関連であり、APPの薬理学的作用・機能性などを予測すると、「抗炎症作用」、「アポプトーシス誘導作用」、「細胞周期停止に基づく増殖抑制作用」という結果であった。(3)1,5-AFの生体内代謝産物である1,5-AGについても、同様の解析を行い、1,5-AGは、細胞に対して、インスリン感受性を高める方向のベクトルを有する遺伝子発現制御(β2-integrinの発現低下とAktの発現増加)を誘導するという結果が得られた。これらのことより、1,5-AFは、直接的な抗酸化作用や抗炎症作用に加えて、糖・脂質代謝制御作用を介して作用する新規抗炎症剤あるいは敗血症治療薬としての可能性も示唆された。
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