研究概要 |
本研究課題で使用するA群レンサ球菌(GAS)の臨床分離株を収集した.今年度は主として再発性咽頭炎患者からの分離株を収集し,DNAシークエンサーを用いてそれらのemm遺伝子型を決定した. 次いでGASのゲノムデータベースから、レンサ球菌の菌体表層タンパクに共通のLPXTGモチーフを指標として,推定の菌体表層タンパクを13種類選出した.さらに,これらのタンパクの中で,N末端に推定シグナル配列を有するものを抽出し,さらに既報の宿主細胞付着・侵入因子と相同性を示す分子を選択した. 血清型M1およびM3のGASゲノムデータベースからは,それぞれ黄色ブドウ球菌のフィブロネクチン(Fn)結合タンパクFnBPAと相同性を有するFbaA,およびGASのFn結合タンパクPrtF2と相同性を呈するFbaBが得られた.続いて,これらFn結合タンパクの組換え体(rFbaAおよびrFbaB)の発現プラスミドを構築し,宿主大腸菌内で発現させた.精製rFbaAおよびrFbaBは,ビオチン標識したFnを用いたリガンドブロット分析およびFnとの生体間分子相互作用解析の結果から,Fnと結合することが示された.また,rFbaAおよびrFbaBを家兎に免疫して,特異的抗血清を作製した. さらに,fbaA遺伝子およびfbaB遺伝子をシングルクロスオーバー法により破壊し,それぞれの標的タンパクの不活化を特異的抗血清を用いたウェスタンブロット法で確認した.M1野生株とfbaA欠失株,およびM3野生株とfbaB欠失株のそれぞれ組み合わせで,ヒト咽頭上皮由来のHEp-2細胞株に感染させ,GASの細胞付着・侵入率の差を計測した.その結果,M1およびM3型菌は,ともにFn結合タンパクの不活化により,有意に付着・侵入率が低下することが示された.以上の結果は,ゲノムデータベースから同定したFbaAおよびFbaB分子が,GASの細胞付着・侵入因子であることを示唆している.
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