研究概要 |
A群レンサ球菌(GAS)は,皮膚や上気道における化膿性疾患の原因菌として,また近年では壊死性筋膜炎やショック症状を引き起こす致死性の高い侵襲性GAS感染症の起因菌として注目を集めている.その病原性に関与する因子が多種に及ぶことから,病態発症のメカニズムは完全には解析されておらず,効果的な治療法あるいは予防法の確立を見ていない.申請研究では,GASの付着・侵入因子であるフィブロネクチン(Fn)結合タンパクの詳細な機能解析を行い,上皮細胞バリアを超えて組織内に侵入するメカニズムを解析した.特に,未だ国内外ともに報告の無い,Fn非存在下での上皮細胞へのGAS付着・侵入機構についても検索し,GASの代表的な初感染部位である皮膚組織における感染成立機序を明らかにしようと取り組んだ.その結果,GAS菌体表層に25〜30℃で発現する線毛が,表皮ケラチノサイト株へのFn非依存性付着に関与することを明らかにした.さらに,これらの分子生物学的所見に従って,侵襲性GAS感染発症株に有意に発現する検査マーカー候補としてFbaB分子を選択した.そして,FbaBの各領域のin Vitroならびにマウス動物実験モデルにおける感染防御抗原としての有効性を検証した.これらの実験から,N末端領域が受動免疫療法に適するオプソニン化効率に優れ,かつ,宿主組織との交叉反応性の認められない特異的抗体を誘導することを示した.
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