研究概要 |
長管骨は軟骨内骨化により形成される。初期軟骨分化では、骨形成予定領域で間葉系幹細胞の凝集がおこり、軟骨細胞が分化し軟骨基質が産生される。後期軟骨分化では増殖、肥大軟骨細胞分化にいたる。その後、骨芽細胞が分化し、骨基質により軟骨基質が置き換えられ骨形成が完了する。このように、骨形成の分子機構の理解には、軟骨形成のメカニズムを知ることが必要である。我々は転写因子とエピジェネティック制御による軟骨形成のメカニズムを解明するために研究を行った。我々は、転写因子、Runx2、が初期軟骨分化を特徴づける2型コラーゲン遺伝子プロモーターに結合することを見いだした。そこでRunx2 isofromが骨基質、オステオカルシン遺伝子プロモーターを活性化する分子機構を解析した。ヒト間葉系細胞、ヒト奇形腫瘍細胞、ヒト骨肉腫細胞株を用いてルシフェラーゼアッセイ、ENSA,ChIPアッセイにより検討した。その結果、Runx2 wt,Runx2Δ5,Δ7,Δ5Δ7のうち、Runx2 wtとΔ7,でのみ転写活性が促進された。エキソン5は核移行に重要な機能を有していることが示唆された。またコファクターであるCBP,HDACはRunx2遺伝子を共発現させた時にのみ、機能を発揮した。さらに、転写因子とエピジェネティック制御によるIL-7Ra遺伝子発現のメカニズムについても研究した。IL-7Raはリンパ球の生存にとって極めて重要であるが、エピジェネティックメカニズムに関しては不明な点が多い。組織培養細胞株を用いた実験からRunxlがIL-7Ra遺伝子発現を制御していることが明らかとなった。我々はこの遺伝子のプロモーター流域に6つのCpGサイト(メチル化サイト)を見いだした。このうち、4つのサイトのメチル化が遺伝子発現と逆相関していることが分かった。さらにMAPキナーゼが、IL-7Ra遺伝子発現を抑制することが明らかとなった。
|