研究概要 |
本研究で機能解析を行っている分子(PRIP)は、我々が新規Ins(1,4,5)P_3結合性蛋白質として見出し、名付けたものである。これまでに、この分子がGABA_A受容体の細胞内輸送を調節することをPRIPのノックアウトマウス(PRIP-KOマウス)を作製しそれを解析する事で明らかにしてきた。一方、それらの解析を進める中で、PRIP-KOマウスは、高インスリン血症かつ低血糖を示すことを見いだした。そして、インスリン抵抗性は野生型と同程度であったことから、PRIP-KOマウスにおけるラ氏島β細胞のインスリン分泌亢進を疑った。 そこで、初代培養ラ氏島を調製し、生理的な高グルコース濃度で刺激したときのインスリン分泌量を測定してみると、有意にその分泌量が亢進していた。また、PRIP遺伝子をノックダウンした膵β細胞(MIN6細胞株)を作製してインスリン分泌量を測定した場合も有意にその分泌量は増加した。これらのことから、β細胞においてPRIPはインスリンの分泌過程を抑制的に制御する分子であることが明らかとなった。 引き続きPRIPを介したインスリン分泌の分子基盤を検討した。グルコース刺激時のβ細胞のCa^<2+>濃度上昇変化は野生型と差はなく、また形質膜上にドッキングしているインスリン顆粒数(readily releasable pool : RRP)も野生型と同程度であった。しかし、KCIで形質膜の脱分極刺激をおこないRRPからの小胞分泌を優先的に促した場合、PRIP-KOマウスで有意にインスリン分泌量の増加が観察された。故にPRIP-KOマウスでは、インスリン顆粒の開口分泌の引き金であるカルシウム感受性が高くなっており、そのために分泌能が亢進していると考えられた。 現在さらにその詳しい分子メカニズム解明に取り組んでいる。
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