研究概要 |
我々は、PRIP分子を新規イノシトール1,4,5-三リン酸結合性タンパク質として見出し、その細胞内機能の解析を行ってきている。これまでに、PRIP遺伝子欠失がGABA_A受容体を介するシグナル伝達機構に異常をもたらすことを突き止めた。さて、哺乳類のPRIPには二つのサブタイプ(PRIP-1,PRIP-2)があり、その発現パターンには以下の特徴がある。PRIP-1は脳特異的に発現している。一方、PRIP-2は、脳を含めて様々な臓器に発現している。このことから、PRIPは中枢神経系において抑制性神経伝達機構を調節するという機能に加え、他にも何らかの全身的な調節機能に関わると我々は想定した。そこで、PRIP-1/-2ダブルノックアウトマウス(DKOマウス)を作製し解析を行い、この変異マウスが肥満やインスリン分泌異常を引き起こすことを認めた。ここでは、その原因解明を行った。 今年度は、単離膵ランゲルハンス島を用い2光子レーザー顕微鏡を用いて開口放出過程の可視化実験を行った。先ず、各種Ca2+インジケーターを用いて、インスリン開口放出時のβ細胞のCa^<2+>濃度変化解析の測定を野生型のコントロールと比較しながら行ったところ、グルコース刺激で誘導されるCa2切流入量には差がなかった。一方、高グルコース刺激・KCl刺激等を行なった時のインスリン開口放出頻度は、有意に増加していた。さらに、薬剤を使いPKAの誘導刺激や掬制を行った結果、PRIP KO細胞では、恒常的なリン酸化の促進があり、その結果開口放出頻度が昂進していることを明らかにすることができた。また、このマウスは、肥満傾向を示すが雌雄差を認めている。その雌雄差の原因に味覚に対する感受性の違いがないかを調べた結果、特に雌雄差は認められなかった。
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