研究概要 |
自己免疫疾患は免疫調節のバランスがくずれ、自己に対して免疫応答を引き起こしてしまう疾患であるこのような自己免疫疾患の大きな特徴は若年性自己免疫疾患のような例外もあるがその殆どが加齢に伴って発症し、閉経期以降の女性に優位に発症することである。自己免疫疾患における性ホルモンの影響という極めて重要な研究課題に対して、最も女性優位に発症するシェーグレン症候群を代表的疾患として位置づけ、女性ホルモン(エストロジェン)と自己免疫疾患発症との関わりを解明することを本申請課題の目的とした。 マウスに卵巣摘出を実施してエストロジェン欠乏状態を誘導すると、顎下腺・涙腺組織のアポトーシスの増大とともに主要組織適合抗原クラスII(MHC II)発現の上昇を認めた。また抗エストロジェン薬であるタモキシフェンを唾液腺細胞に作用させると乳がん細胞株(MCF-7)で既に報告されているのと同様に,早期に転写因子Interferon regulatory factor-1(IRF-1)が誘導されることを確認した。これらのことからエストロジェン欠乏状態の顎下腺・涙腺において自己免疫発症の初期にインターフェロン-γ(IFN-γ)が重要な役割を担うと考え、IFN-γを誘導するインターロイキン-18の動態を確認したところ、卵巣摘出に伴い血清中また顎下腺・涙腺においてその発現が高くなることを認めたまたIFN-γによって誘導される種々のケモカインや転写因子についてさらに検討を加え、エストロジェン欠乏状態において強力な免疫応答分子であるIFN-γがT細胞だけではなく、局所の上皮細胞へのアポトーシス、MHC II発現誘導やケモカイン発現に作用していることを確認した。さらにエストロジェン欠乏によるIFN-γ誘導のメカニズムを産生時期や産生細胞を明らかにすることにより詳細に検討していきたいと考えている。
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