研究概要 |
テトラスパニン・スーパーファミリーに属する癌転移抑制因子CD82/KAI-1の細胞間接着における機能についてCD82低発現コントロール細胞株hl299/zeoおよびCD82強制発現細胞株h1299/CD82を用いて検討した。 1.癌細胞同士の細胞間接着におけるCD82/KAI-1の機能解析 コントロール細胞株は活発な原発巣からの細胞離脱が認められるが、CD82の強制発現によって、完全に抑制された。さらに、CD82の強制発現は細胞凝集を著明に促進した。この細胞凝集はEDTAおよびE-cadherinの中和抗体処理で阻害された。CD82強制発現はE-cadherinの発現に変化を及ぼさなかったがE-cadherin/β-catenin複合体を増加させていた。CD82強制発現により、β-cateninのチロシンリン酸化が抑制されており、CD82はE-cadherin/β-catenin複合体を安定化することで、E-cadherinによる癌細胞間接着を強固にし、癌細胞の原発巣からの離脱を阻害していると考えられた。 2.血管内皮細胞への細胞間接着におけるCD82/KAI-1の機能解析 マウスの実験的肺転移モデルにおいてCD82の強制発現は肺転移を約70%抑制した。CD82は癌細胞の並管内皮細胞への接着を著しく低下させた。コントロール細胞株の血管内皮細胞への接着は抗シアリルルイスA,X中和抗体により抑制されることより、CD82がその抑制に関与していることが示唆された。CD82強制発現によってST3β-gaiactoside α-2,3-sialyltransferase4(ST3GAL4)が1/20に抑制されていた。CD82は、 ST3GAL4の発現抑制により、シアリルルイス抗原の生合成を阻害し、血管内皮細胞への癌細胞接着を抑制していると考えられた。
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