研究概要 |
【目的】過酸化水素などの有害物質を用いず,生体に安全な酸素や水をプラズマ化して環境にクリーンな低温滅菌法を開発することである。【方法】10^6個の芽胞(B. Stearothermopylus, B. atrophylus, B. pumilus)を塗布した試料を,プラズマ装置(Pack3,ワイエイシイ)を用いて,出力150W,60℃にて10分処理した.処理ガスの種類(N_2,O_2,O_2+H_2O),ガス圧(13,48,100Pa),電極(対向,同軸)をパラメータとして,試料の発光スペクトル(C7460,浜松ホトニクス)をピンポイントで測定するとともに,培養法による滅菌効果の検討と試料表面の損傷状態の観察(マイクロスコープ:VC7700R,オムロン)を行った.【成果】1)N_2プラズマでは,真空紫外域をはじめ,発光強度の高いスペクトルが多数検出された.しかし,10^6個の芽胞は3種類とも10分では滅菌できなかった。2)O_2プラズマでは,ガス圧の低い方が活性種の発光強度が高く滅菌効果も高く,対向電極を用いて,13Paで10分処理すると10^6個B. Stea試料はすべて陰性培養を示した。3)"O_2+H_2O"プラズマでは,308nm(OH),656nm(H),777nm(O),845nm(O)に発光強度の高いスペクトルが検出され,バブリング法で水を供給(自然気化量)した場合は滅菌効果が高かったが,加熱気化式水供給装置(SLM:堀場エステック)で水を供給(O_2:44 sccm,H_2O:6 sccm)した場合は滅菌効果が低かった.水供給装置では,各スペクトルの発光強度に変動がみられ,このH_2Oの状態の不安定が滅菌効果に影響を与えている可能性が示唆された。4)同軸電極は,対向電極に比較して,各活性種の発光強度が相対的に低く,滅菌効果が低かったが,試料表面の損傷は小さかった。同軸電極はイオンがトラップされるため,試料へのダメージが少ないものと推察される。次年度は,試料損傷が小さかった同軸電極について,電極の形状や表面加工に改良を加え,滅菌効果を増大できる方法を検討していく予定である。
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