研究概要 |
歯髄疾患に伴う難治性疼痛の病謡に関する中枢機構についての基礎的研究として,SD系ラットを実験動物として用いて視床内側背側(MD)核内に見出した臼歯歯髄駆動ニューロンの応答性の変化に,NMDA型Glutamate受容体が関与している可能性について検討した。NMDA受容体非競合拮抗薬MK-801(200nM/0.5μl)をMD核内歯髄駆動ニューロンの近傍(間隔:0.35mm)に微小注入した動物とこの処理を行わなかった対照動物で,同ニューロンの歯髄電気刺激に対する応答性の変化を,mustard oilを適用した化学的条件刺激下で検索した。その結果,NK-801の微小注入はMD核内歯髄駆動ニューロンの応答性を対照群に比較して有意に減少させることが示された。このことは,mustard oilによる歯髄化学的条件刺激は中枢内のNMDA型Glutamate受容体を介したシナプス伝達系を賦活化していることを示唆している。また,歯髄疾患に伴う中枢神経伝達物質の動態に関する神経科学的研究は本年度は予備実験を開始したところである。 歯髄疾患に伴う難治性癖痛の臨床的研究として,歯髄疾患処置後あるいは根尖性歯周炎に伴う歯原性慢性疼痛と診断された患者の訴える痛みについて,日本語版McGill疼痛質問表並びにVAS法を用いた解析を通常の慢性根尖性歯周炎患者を対照に実施した。その結果,歯原性慢性疼痛を訴える患者ではMcGill疼痛質問表の質問事項で感覚的因子および評価的因子に関して有意に高いスコアを示すこと,またVAS値も有意に大きい値を示した。この研究は継続中であり,来年度中間発表を予定している。
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