研究課題/領域番号 |
18390505
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
野杁 由一郎 大阪大学, 歯学部附属病院, 講師 (50218286)
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研究分担者 |
恵比須 繁之 大阪大学, 大学院・歯学研究科, 教授 (50116000)
阿座上 弘行 山口大学, 農学部, 准教授 (40263850)
薮根 敏晃 大阪大学, 大学院・歯学研究科, 助教 (90423144)
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キーワード | 難治性根尖性歯周炎 / バイオフィルム / Porphyromonas gingivalis / 変異株 / グリコシルトランスフェラーゼ / ジンジパイン / 共焦点レーザー顕微鏡 / 微細形態学 |
研究概要 |
平成20年度は、ヒトの難治性根尖性歯周炎や成人性歯周炎の主要病原細菌の1種であるPorphyro monas gingivalisのバイオフィルム形成、特に菌体外マトリックス形成に関与すると推察されている遺伝子、PGN1251の変異株(KDP360株)および相補株(KDP361株)をP.gingivalis ATCC33277株(野生株)を用いて作製し、PGN1251の変異が自己凝集能、赤血球凝集能、プロテアーゼ(ジンジパイン)活性、リポ多糖(LPS)と陰イオン性多糖(APS)の発現、ならびにバイオフィルム形成能について検索した。KDP360株は野生株に比べて、自己凝集能の充進、赤血球凝集能の欠損、ジンジパイン活性の低下、LPSのO抗原とAPSの欠損がみられた。一方、相補株であるKDP361株では、それらは野生株と比べて有意な差はなかった。これらの結果より、PGN1251がLPSのO抗原やAPSの発現ならびにジンジパインの活性化に必須の遺伝子であることが示唆された。また、KDP360株のバイオフィルム形成量は野生株と比較して有意に増加しており、その厚みは共焦点レーザー顕微鏡下で約2倍であった。微細形態学的には、KDP360株の菌体表層のマトリックス構造は、野生株とは異なり粘液様のマトリックス構造物が観察された。グリコシルトランスフェラーゼのモチーフを持つPGN1251は、本菌のバイオフィルム形成においてマトリックス合成に関与していることが明らかとなった。バイオフィルム形成は大別すると、付着、成長、成熟、剥離の4つの過程から構成される。KDP360株においては、自己凝集能が充進していたことを合わせて考察すると、PGN1251遺伝子はP.gingivalisバイオフィルムの成長〜成熟過程で作用し、バイオフィルム形成には抑制的に作用すると考えられる。これらの成果は、PGN1251遺伝子を用いたバイオフィルム形成阻害薬の開発に向け、礎となる有用な知見である。
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